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文京カレンダー【日曜ドラマ】恋愛アスリート:「女だって攻めたい。」月9ヒロインを目指すストイック女子。クリスマス夜、その結末

公開日: 2020年2月16日日曜日

 

文京カレンダー

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「将来の夢は東京のセレブでリッチなマダムになること」


幸せの定義は他人に決められるものではない。
が、他人から羨ましがられる幸せを否定する権利もまたない。


外資系金融に勤める友人を持つ、5大商社が野菜を卸す都内有名スーパー勤務の女性、恵美(25歳)。

漢検2級と自動車運転免許(AT限定)を所有し、箱根駅伝に隔年で出場する大学卒の彼女は世にいうハイスペック女子(自称)。


彼女の野望は「月9のヒロインのような人生を送る。」ことである。

『リッチマンプアウーマン』の石原さとみのような。
『ラストクリスマス』の矢田亜希子のような。
ドラマチックなサクセスストーリー。

自己の描く理想の恋愛像を目指して、時にはストイックに、時には野心的に研鑽に励む彼女の姿を人々はこう呼ぶ。



”恋愛アスリート”



誰にミーハーと言われようとも構わない。

これは、東京の中心、教育熱心な母の集う治安の良さが自慢のここ文京区で繰り広げられる、一人の女性の狂想曲である。







智樹との出会いは、学生時代のアルバイト先での先輩である伊藤さん主催のお食事会だった。


当時、いやらしくも高年収、ハイスペックの香りがする男にしか興味のない私は、中々お付き合いする相手を見つけられずにいた。

そんな折に出会いの機会をご提供してくださったので、迷わず参加することにした。



開催された場所は茗荷谷駅から歩いて間もない、CAFE「totoru」である。




「今日は皆お忙しい中集まってくれてありがとう!美男美女が揃いましたね!あ、自画自賛ですね(笑)乾杯!!」


ややウケとやや滑りの狭間を突っ走るその姿勢に「お食事会慣れしている」という第一印象を受けたのが智樹だった。

警戒心を抱きつつも、月9のヒロインになるためには男性との出会いの機会を逃してはならない。私のドラマは水戸黄門のようにエンドレスではないのだから。

私は積極的に攻めることにした。


「智樹さん話がお上手ですね~。お仕事はやっぱり営業系ですか?笑」


相手を褒めて喜ばしつつ、仕事をさりげなく探る。
「やっぱり」とピンポイントに限定することで、「探る」という目的を「当てる」という目的でカモフラージュする。

幾度かのお食事会を通じて身につけた基本テクニックである。


「俺の仕事?違います!外資の飲食会社!」


少年のような答え方をする智樹に初めてキュンときたのがこの時だった。
いやそれ以上に。


「外資系」


この単語に過敏に反応してしまった私がいた。
華やかな駐在生活が頭の中を駆け巡る。

「えーー凄い!本社とかはどこにあるんですか?」

私は旅行ですら海外経験がないため、海の向こうへの憧れは人並み以上である。
この時点で今日の返事は一律、”褒め殺しワード”を接頭語とすると決意する。

「本社はアメリカだね」

先進国。大歓迎だ。

「かっこいいですねーー!!知ってる商品あるかも?社名教えて下さいよ笑」


攻める時は攻める。推して、いや押して知るべし。


「社名は怒られるからダメ笑。強いて言うなら赤のM笑笑」


誰もが知ってるから言えないのであろう。ここで大手である確信を得る。


「赤のM」


なるほど。”三菱モルガン・スタンレー食品”とか多分そんな感じであろう。
女の勘が優良物件男子であることを察した。







楽しい会食会が解散されたタイミングで私は行動に移すことにした。


「智樹さん今度一緒にご飯行きましょう!12月24日とか空いてますか?」


この日がクリスマスであることは百も承知だが、警戒心を抱かせないよう日付のみ提示したのは私なりのストラテジである。


「OK!そしたらおすすめのイタリアンがあるからそこで!」


即レスでおすすめのイタリアンが出てくるあたり。2017年クリスマスの勝利を確信した瞬間だった。





”いざ、決戦のディナータイムへ”



12月24日の待ち合わせは19時。


駅で待ち合わせをした私たちは、智樹にエスコートされて話しながら現地へ向かう。

「これから行く店は高校の頃からよく行ってて大好きなんだよね。」

何気ない会話から智樹の育ちの良さが感じられる。
向かう先のイタリアンは日本中で絶大な人気を誇る超有名店との話だ。



今日を楽しみにしていた私は、この日のために万全の調整を重ねてきた。


12月18日から有給を取得。まずは月9『ラストクリスマス』を1日で全シリーズ鑑賞。
入念なイメージトレーニングを重ね、矢田亜希子の物真似を完璧にマスターした。
友人からは「とんねるずのものまねに出れるレベル」との評価を得るまでにいたった。


美容の向上も欠かさない。
今まで愛用のグミだった「HARIBO」は避け、必ずコラーゲンが4000mg以上入っているグミしか食べないことにした。


体調管理も重要だ。
食事の最初は野菜から食べる。日常の活動から骨盤を意識する。毎日のコアトレーニング。その後のプロテイン。
1週間という短期間ながら、プレミアリーグ2部までならなんとかやれるフィジカルを手に入れた。


待ち合わせの1時間前からブラジル体操。食事中に肉離れを起こさないよう体を適度に温めている。
エスコートされながら歩くときに感じる大腿四頭筋の筋肉痛が心地いい。
体がタンパク質を早く早くと求めているのが分かる。


胸と腹を高鳴らせながら私は足を早めた。




「ほら、着いたよ。」











小洒落た内装。親しみやすい緑の看板。これが智樹が高校時代から御用達のイタリアン。


社会人になるまで、田舎の島国で育ってきた私はこの空間に魅了された。
ほとばしる緊張。私の今の服装はこの店内にふさわしいものだろうか。
私なりに万全を期したつもりだが、ドレスコードに引っかからないであろうか。


アウター、パンツ、靴は当然GORE-TEX。下着にアンダーアーマー着用。
やや着膨れが気になったが、念のため防弾チョッキも着込んできた。



「ねえ智樹、私この格好で入って大丈夫かな。。。」


私の不安を払拭するように彼は笑いながら答える。
「全然大丈夫だよ!この店はそういうの気にしなくていいことが売りだから笑」

彼の笑顔に安心を覚えた私はこのイタリアンを満喫することにした。



「私はメニューのことよくわからないから智樹さんのおすすめ頼んでください!」

どんなものが好きなのか知る意味でもここは智樹に一任することが最善と思えた。

「とりあえず赤ワイン2つ、ミラノ風ドリア2つ、フォッカチオ1つ、マルゲリータ1つ、ディアボラ風チキン2つお願い致します。ピザは6等分に切ってください!」

手慣れたものでメニューすら見ずに注文してしまった。
さすが高校時代からの常連である。



”「一流」のイタリアンを知る。”



智樹おすすめのこのイタリアンには私はかなり驚かされた。


商品が出てくるのが格段に早い。
島国で育った私はイタリアンとはコースメニューを前菜からメインまで一つ一つ堪能するものだと思っていた。

しかし、この店ではほとんどのメニューが全て15分も立たないうちに揃ってしまった。
しかも美味しいのだ。
一流の店とは、質と速さを完璧に兼ね備えているものなのだろうか。


店のレベルへの興味と連日のトレーニングでお腹を空かしていたことから、勢い余って次々と注文してしまった。


お互い満腹となり会話も一通り弾みきったあと、お会計にふと頭がいった私は大きく動揺した。



「本当においしくて好き放題頼んでしまいましたが、お会計凄いことになってそうですね。。。」


一体何品頼んだであろうか。レジにて出力されるレシートの量が凄まじい。
財布の中身が足りるか不安を覚えつつ、即座にカバンの中の財布に手を伸ばす。


「いいからいいから!ここは奢らせて!!俺のほうがたくさん食べたから!!男気見せさせて!!」


ユーモアを聞かせた返事に彼の心遣いを感じた。

申し訳無さを覚えつつその好意が嬉しかったので、いつかお返しすることを胸に誓いお言葉に甘えることにした。



「ごちそうさまでした!美味しかったです!!」

店の外に出たあと素直な感情が口から出た。

本場のイタリアンを知ることが出来ただけでも今日は貴重な経験である。


「それは良かった!お腹いっぱいだ。ちなみにあそこのビーフも凄いおいしんだよ!いつか連れてってあげるね。」










”良い雰囲気で店をあとにした2人。そして迫るクリスマスの夜...”


「今日は楽しかった!来てくれてありがとう!」


終始無邪気に、そして直球に感情表現を示すのが彼の特徴であるということはこの短期間で把握している。楽しんでもらえた様子を察して素直に自分も嬉しくなった。

同時にこの楽しい時間が終りを迎えつつあると感じて言い知れぬ物寂しさを感じた。

「私のほうこそ本当に楽しかったです!またご一緒してください!」

辛い一時に比べてなぜこうもあっという間になのだろう。
ビリーズブートキャンプの1時間はいつまで立っても終わらないのに



「ところで今日ってなんの日でしたっけ笑?」






ドキリ







2人の間に緊張が走る。

嘘だ。すでに私の幸せは絶頂だ。これ以上を望んでいいはずがない。
今日が年に一度の一大イベントであること位当然知っている。
そうだ、これは恐らくTBS人気番組『モニタリング』あるいはテレ朝『ロンドンハーツ』。そうだ、きっとそうに違いない。ああ、私もついに地上波デビューか。




「さぁー。。なんの日でしょう笑」




月9のヒロインばりに焦らすことに決めた。矢田亜希子の物真似の準備はできている。私は分かりやすくとぼけてみる。



「なんとびっくり、今日は ”クリスマス” なのです。」






ピクリ







上腕二頭筋に緊張が走る。
”クリスマス”というストレートな単語が発せられた瞬間、感じた。これは、、もしや現実...? 私はコート右ポケットの握力計をギュッと握りしめる。(67kg)





「なんとびっくり、今日は ”クリスマス” なんですか。」




これは撮影じゃないと。あなたはそう仰るんですか。信じられないが、今幸福の絶頂が目の前に訪れている。






「そう。だから、これから行くところに黙ってついてきてくれるかな!」




― ...いいとも!!! ―




返事の言葉を発さなかった。
そうせずともお互いの思考が完全に一致していることを理解できたから。

行くべきところがどこかはっきりと分かったから。

そうして私たちは歩みだした。
感情の赴くままに。行く手を阻むものは何もない。


そしてたどり着く。



きた。



来た。



来ました。



ついに....









カポーーーーーン...................................



カポーーーーーーーーーーーン...................................



カポーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...................................





















いやーーーーーーーーーー!!!!!!









真冬の銭湯は最高ですねーーーーーーーーーーー!!!!!






クリスマスと言えばサンタ!

サンタといえばフィンランド!

フィンランドといえばお風呂!

お風呂といえば銭湯!


クリスマス=銭湯」ですよね!!!!



お湯風呂→冷風呂→お湯風呂→冷風呂→お湯風呂→冷風呂→お湯風呂→冷風呂→お湯風呂→冷風呂→・・・・エンドレス最高ひゅーーーー!!!!乳酸発散ひゅーーーー!!!!!!!!!疲労回復ひゅーーーーーー!!!!!!!!!!



銭湯最高!!!





やっぱり俺はチキンライスか、お風呂後にファミチキと缶ビールでいいや~♪








・・・女子目線書いてる自分に尋常ない拒絶反応示しました。

サンタさん、秋元康が「僕」を多用する気持ちをプレゼントくださりありがとうございます。


▶NEXT 最終回:12月31日 日曜更新予定(しない) 
サウナで汗を流す智樹と、年内ベンプレ120kgを目指して筋肉を揉みほぐす恵美。その結末は...?!


今年もゆとりですいません。

メリークリスマスoy 


      
    木
   木oy
  木oy
 oy
   幹幹幹  

  
 

  
 

  
 
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